恵那市

公共施設に張り巡らされた光ファイバ網を活用
ICT教育の基盤として日常使いできる無線LAN環境を整備

教育現場におけるICT化を県下に先駆けて推進してきた恵那市教育委員会では、新たに市内の公立小中学校に対してICTインフラの基盤を整備すべく、Arubaの無線LANソリューションを導入、災害対策用に避難所への展開も含めて、市内全域に点在する公共施設におけるネットワーク基盤を整備した。タブレット端末や2in1ノートPCを導入し、校内のあらゆるところからネットワークにアクセスできる環境を構築し、教育現場でのICT活用を積極的に推し進めている。

先進的なICT教育への積極的な投資を行う恵那市

2004年に旧恵那市と恵那郡の5つの町村が合併したことで新たに誕生した、岐阜県南東部に位置する恵那市。恵那山や焼山など山々に囲まれ、木曽川や阿木川、矢作川などが山間を流れる土地柄だけに、四季折々の風情を楽しむことができる景観が大きな魅力だ。市内全域の8割近くが山林で占められており、木曽川をダムで堰止めた恵那峡など景勝地として楽しむスポットだけでなく、中心市街地を横断する中山道大井宿や日本三大山城の1つに数えられている岩村城跡、レトロな雰囲気漂う日本大正村など、歴史的な観光資源も数多く点在している。

恵那市

教育にも力を注いでいる恵那市では、「思いやりと文化を育む人づくりのまち」を目指して、未来を担う子どもたちの健全育成に努めている。なかでも学校教育においては、「主体性」「社会性」「郷土愛」の育成を主眼に置きながら、規律と対話のある教育を方針として推進している状況だ。

そんな恵那市では、以前から公共施設をはじめ、市立の小中学校やこども園まで含めた様々な施設に光ファイバ網を張り巡らせており、ICTに対して積極的な環境づくりを行ってきた。恵那市教育委員会のほうでも、県下に先駆けてICT教育を積極的に推し進めてきた経緯があり、現在は文部科学省が定めた第2期教育振興基本計画に沿ってICT環境の整備を行っている。この環境整備の中で、無線LANおよびタブレットを中心とした新たなICT教育の在り方について模索してきたと語るのは恵那市教育委員会 教育長 大畑 雅幸氏だ。「これまでもコンピュータが固定的に設置されたPC教室などを学校内に設置し、現場での積極的なICT教育を進めてきました。しかし固定された環境では、小学校だと45分、中学校だと50分の間、PCをずっと使うような授業にならざるを得ません。授業の中でちょっと調べ物をしたり記録したりするための手軽なツールとして使えるのが、PC活用の本来あるべき姿。今まで持っていた教材や文房具と同じようにICT環境が使えることが、一番の有効活用ではないかと考えたのです」。

そのためには、日常生活の中で”普段使い”ができるよう、校内のいたるところでネットワークにアクセスできる環境が必要であり、そのためのネットワークとして無線LANの必要性が高まったという。また、同委員会 教育研究所 指導主事の遠山 唯史氏は「端末の管理や情報に対するフィルタリング、プログラミングなど学校で学んだことを、主体的に社会性を持って活用できる”情報モラル”の醸成という観点でも、身近にアクセスできる環境を整備することが学びの機会として重要だと考えたのです」とその意義を語る。

セキュリティを重視しながら快適に利用できるものを検討

無線LAN環境を整備するにあたって重視したのが、第三者から干渉されやすい無線環境であってもリスクが最小限に抑えられるセキュリティ対策だ。「SSIDに対するパスワードという基本的なものはもちろん、Macアドレス認証などより詳細に接続機器制限できるセキュリティ対策が実装できるものを要件に挙げました」と同委員会事務局 学校教育課 学務係 兼 学校再編対策室 主査の山田 耕司氏はそのポイントを語る。

また、市内全域での展開によってアクセスポイント(以下、AP)の導入台数が多くなることが予想されていたことで、無線コントローラによる集中管理の仕組みも大きなポイントの1つだった。「市内全域に張り巡らされた光ファイバですが、100Mbpsしか確保できないところも少なくありませんでした。APを集中管理するための管理パケットが帯域を圧迫してしまうようなソリューションもあるため、帯域についてもしっかり配慮されたものが必要だったのです」。センターによる制御だけでなく、学校ごとにコントローラを設けて連携できるような、柔軟な構成が実現できるものも必要だったのだ。

さらに、災害時であっても情報収集が可能になるよう、避難所へのAP設置も検討していたため、DHCPによって簡単にアクセスできるなど、使い勝手の面でも利用者に負担のない運用が可能かどうかを重視したという。設置を含めた工事費の負担なども考慮し、PoE対応といった具体的な要件についても挙げている。

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実は導入前に、複数の学校で試験導入が実施され、無線環境でタブレットを使うために過不足がないかどうか、教育委員会のほうで検証が行われた。その結果を受けて全体に展開する無線LANの入札が行われており、複数の企業が応札した結果、上記の要件を満たした製品の中から最もローコストな仕組みとして、Arubaの無線LANソリューションが選択されることになる。

市内の小中学校全域に無線LANネットワークを敷設

現在は、市立の小中学校すべてにAruba IAP-305が導入され、避難所も含めて400台あまりのAPが市内全域に展開されている。IAPが持つ仮想コントローラ機能を利用して、拠点ごとに集中管理を行っており、すでに敷設済みの光ファイバ網を利用してネットワーク網を構築している。SSIDは授業の中で活用するものと、避難所で一時的に利用するもの2つが用意されており、後者のSSIDは休止させた状態で普段は運用し、万一の際には無線コントローラ機能を使ってSSIDを一気に開放する予定だ。

すでにAPの展開は終えているが、タブレット端末はこれから順次小中学校に導入されていく予定で、学校ごとに最大人数のいるクラス全員に端末が行きわたるよう手配される計画だ。今回調達したAPは、保守の観点からすべてIAP305に統一されているが、以前に試験導入したHPE製のHP M330 Dual Radioも引き続き利用され、統合的に運用管理されている。

これから本格的な運用が行われるが、特にこだわっているのは”とにかく使うこと”ではなく”どの場面で使うのか”ということ。「試験導入した学校でのICT活用例が、発表会にて共有されています。素人から見ても分かりやすいのは、例えば3平方の定理を証明する際に、タブレット上で図形を動かして証明していくといった使い方です。実際の画面で試行錯誤できるため、従来のやり方に比べても生徒は理解しやすいのではないかと思います」と山田氏は語る。理科の実験結果を動画で撮影して共有したり、失敗した実験の成功事例をすぐにその場で見ることができたりなど、ちょっとした授業の中で活用できているという。

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また、ICTによる教育を通じて、地域における活動にも貢献できるような施策を考えていると大畑氏は力説する。「観光名所のいたるところにQRコードが設置されており、スマートフォンでQRコードを読み込むと、地域の生徒たちがその歴史について紹介する動画が流れるようになっています。ICTを使った様々な活動を通じて、学校の授業だけでなく地域で活躍できる場を提供するということも積極的に行っていきたい」。また、遠山氏は「授業の中で使う計算用のアプリやアニメーションソフトなど恵那市独自の学習コンテンツも用意しています。子供たちだけでなく、教える立場の教師に対しても研修を行っていくなど、積極的にICTを活用してもらえる環境づくりにも取り組みたい」と語る。

なお、教育環境の整備が目的の中心にあるため、実際の定量的な効果は示しにくいと大畑氏は語るが、無線LANによって校舎内どこにいても情報にアクセスできる環境が整うことで、従来必要だったPC教室を廃止することができるという。「実は公設民営で学童保育を運営している恵那市では、新たな施設を建てたり個別に借りたりして施設運営せざるを得ませんでした。このPC教室のスペースが学童保育として運用可能になるため、コスト効果が期待できる部分はある」と大畑氏。あくまで副産物的な話題だが、費用削減の効果として示せるものだと語る。

ちなみに、コアスイッチやL2スイッチなど一部のネットワーク製品にHPE製のものを使っており、「ライフタイム保証された製品をご提供いただいており、長く使える点はとてもありがたい。コマンドも分かりやすく、個人的に気にいっています」と山田氏。教育分野に関しては予算が付きにくいケースもあるというが、保証期間の長い製品を取り扱っていることに対する評価は高い。

学校同士の交流や遠隔授業、海外交流など活用シーンの広がりに期待

まだ実際の運用が始まっていないものの、通常の授業内での活用はもちろん、タブレットが持つカメラやマイクの機能を使って、市内の先生同士で遠隔交流を進めながら、いずれは子供たち同士での交流 にまで広げていき、例えば不登校の子供に対する支援といった活動にも応用していきたい考えだ。特定の先生が行う授業を他の小中学校で受講するなど、遠隔授業などへの応用も期待されている。「インターネットには地域格差はありません。可能性の広がるインターネットを利用して国際交流を図るなど、様々な用途に活用できるはず」と大畑氏。また、特別支援教育の中でのICT活用にも遠山氏は期待を寄せており、「単に寄り添うだけでなく、音などの聴覚や図形などの視覚的な効果を利用するといった、1人1人に適切なアプローチを模索するための手段として、大きな力を発揮してくれると考えています」と語る。

インフラ部分に関しては、避難用のAPと接続する光ファイバ網が仮にダウンしてしまったときに備えて、冗長化を含めた予備回線の整備なども将来的には考えていきたいと山田氏は今後について語った。