慶應義塾大学

用途に応じた5種類のAPを使い分け
研究室も含めたキャンパス全域に最適な無線LAN環境を展開

2000年以前から無線LANに取り組んできた慶應義塾大学 矢上キャンパスでは、キャンパス全域をカバーする無線環境の刷新を計画。テニスコートをはじめとした屋外や数百人規模が収容できる教室、古い建屋など環境に応じて使い分けることができるアクセスポイントを検討し、Arubaの無線LANソリューションを導入。研究室への展開も含め、コントローラによる集中管理によって快適な無線環境を維持すべく、品質改善に取り組み続けている

野良APが数多く存在、SSIDが40個以上の厳しい無線環境

慶應義塾大学

慶應義塾大学 矢上キャンパスでは、理工学部のキャンパスという特性上、研究向けの実験的な環境として1990年代後半から無線によるネットワークを一部に先行導入していた経緯がある。本格的なキャンパス全域への無線LAN展開は2002年頃で、「KEIOMOBILE」というサービス名で独自の認証基盤とともに無線LAN環境を構築した。「当時はアクセスポイント(以下、AP)を300台ほど展開していましたが、コントローラのない仕組みだったこともあり、1台ずつ設定したうえで配置していくという運用でした」と語るのは理工学インフォメーションテクノロジーセンター(ITC) 主務 大塚 智宏氏だ。当時もエンタープライズモデルを導入した同大学だったが、運用してから月日が経過すると、毎週のようにAPの不具合が発生し、障害対応に多くの時間を費やしていたという。「集中管理できていなかったこともあり、ユーザーから調子が悪いと連絡があるたびに現地に出向き、APを取り外して対処するという運用が続いていました」と理工学ITC 主任 降旗 ゆかり氏は当時を振り返る。

その後、2010年にようやく新たな環境への刷新プロジェクトが動き出し、グローバルで安定した実績のあるもの、そして効率的な運用を目指して集中管理できるものを希望した大塚氏。「導入前に無線環境を調査したところ、キャンパスのある場所では40ものSSIDが利用されていたことも。モバイルルーターや研究室が独自に持ち込んだものなど数多くの”野良AP”がキャンパス内に存在していました。現場の環境に対して柔軟にコントロールできるものが必要だったのです」と大塚氏。

電波環境の最適化と野良APの削減に向けた用途別APの採用を希望

そこでコントローラ型の無線LANで現場の無線環境に応じてAP同士が自動調整できるような仕組みを検討した。ただし、野良AP自体の電波出力が大きいため、その環境を考慮しすぎてしまうと繋がりにくい環境が生まれてしまうことを懸念した大塚氏。結果として最大出力での運用を余儀なくされたのだが、管理側できちんとコントロールできるものが求められた。また、事前の調査で5GHzでの運用が環境的に難しかったこともあり、古い建物はシングルラジオのAPを導入することを決断。さらに、広いキャンパス内の運用管理を効率化するべく、無線環境が可視化できるソリューションも要件に含めたうえで入札を行い、同大学の要件にマッチした無線LAN環境としてArubaの無線LANソリューションが選択されることになる。以前湘南藤沢キャンパスで勤務経験のある理工学ITC 事務長 浅見 健次氏は、「私が在任時に、湘南藤沢キャンパスではArubaが使用されており、実績的にも十分だと考えました」と語る。そうした環境面の刷新とともに認証基盤の再構築も実施し、新たな無線LANサービス「keiomobile2」がスタートしたのが2011年のことだった。

そして2017年に迎えた無線LAN環境の更新では、最新規格のIEEE802.11acに対応していることを大前提に、用途に応じた複数のAPを要件に挙げたという。具体的には、従来の電波環境を改善するべく外付けアンテナに対応したものから、これまで研究室で個別に導入してきたAPを置き換えるための小型APまで。「研究室向けのAPも我々の管理下に置くことで、AP同士を連携させて電波環境を良好な状態に保つことができるようになります。電波環境の最適化と野良APの削減を目指した、機種選択の柔軟性が大きな要件の1つでした」と大塚氏。なお、今回の刷新では事前に電波測定を行ったところ、古い建物でも5GHzでの運用が十分可能であることが確認できたという。そこで今回の調達では、5GHzでの運用を見据えたデュアルラジオ対応のAPも要件に加えることになった。

もちろん、複数のAPを集中的に管理し、電波環境の自動調整などによって環境改善につながる機能も要件に含め入札を実施。結果として、前回同様Arubaの無線LANソリューションが矢上キャンパス全域をカバーする無線LANインフラに採用されることになる。

快適な無線環境の整備により環境改善を実現

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現在は、冗長化と負荷分散を目的にコントローラ「Aruba 7220」が2台配置され、築年数の経過した壁が分厚い建屋には外付けアンテナに対応した「AP-314」を、通常の建屋内に設置する際にはアンテナ内蔵型の「AP-315」を、数百人の収容が可能な大教室など高密度環境での利用にはアップリンクがデュアル対応可能な「AP-335」を、そしてテニスコートなどには屋外用の「AP-275」を展開。研究室など室内への設置用には「AP-205H」が採用され、トータルで370台を超えるAPがキャンパス全域を無線エリアとしてカバーしている状況だ。無線の可視化については、仮想サーバ上にAirWaveを展開しており、電波の弱いところがあれば問い合わせが入る前に同センターで対処することも可能だ。この矢上キャンパスでは学生が4000名あまり、教職員も含めると4500名ほどが在籍しており、最大での同時接続台数はトータルで1800を超える数にまで達しており、昨年の同時期に比べて1.5倍の伸びを示している。

SSIDについては、慶應義塾全体として共通のものが採用されており、あわせて教育研究機関での相互接続に利用されるeduroamも運用している。学会など臨時で無線環境を開放する際には、その都度新たなSSIDを発行しており、「簡単にSSIDが設定できて環境が作れるのはコントローラ型だからこそ。1台ずつ設定せずにすぐに環境が用意できる」と降旗氏は評価する。使いやすさの面では、設定そのものが非常に分かりやすく、視認性も高いという。「買収などで機能が追加されている他社製品の場合、オペレーションの際に若干居心地の悪さを感じることも。Arubaにはそういうところがない」と大塚氏。

なお、2011年からArubaの無線LANを導入している同キャンパスだが、これまでAPが壊れたことがほとんどないという。「おそらく6年間に3回程度しかAPが故障した記憶がない」とハードウェア品質の高さに大塚氏は驚きを隠せない。「同じクラスの他社製品と比べても軽くコンパクトに設計されており、天井に取り付ける際も不安が少ないのは評価するポイントの1つ」とも。

電波環境については大きく改善しており、無線LANの快適な接続状況を示すクライアントヘルスでは、更新前は最も厳しい環境下で品質の安定しないクライアントが20%ほどだったが、今では5%程度にまで抑えられており、品質改善が進んでいるという。以前よりも電波環境が良くなったと先生たちの評価も高く、「5GHzで使えるようになったことが大きいと考えられますが、電波の自動調整など全体最適化に向けた機能も貢献しているはず」と大塚氏。今では部門間の会議でもタブレットを利用しての会議が一般的に行われているが、「利用者が意識することなく、気づけば繋がっているという環境がしっかり整備できたのは大きい」と浅見氏は評価する。「コントローラ導入以前と比べて、管理のしやすさに感動しています。故障率も低く、新たに研究室内にAP-205Hを普及させていくことで、キャンパス内の無線環境をさらに充実させていきたい」と降旗氏。

研究室への標準APの展開を加速

今後については、研究室内に独自に導入されているAPをできる限りAP-205Hに置き換えていきながら、セキュリティ強化および電波環境のさらなる改善に努めていきたいという。「研究室では、ローカルの有線LANに無線機能付きのブロードバンドルーターを入れて外部接続しているケースが多くあり、独自のプライベートネットワーク環境で無線LANが運用されている。これをArubaに置き換えるために、研究室向けの認証基盤サービスを整備していきたい。ロールベースでの制御ができる基盤であれば、単一のSSIDでも各利用者が所属研究室のプライベートネットワークに接続できるようになるはずで、認証基盤のClearPass導入も視野に入れています」と大塚氏。

また将来的にはAruba CentralなどクラウドWi-Fiについても使える場面があれば検討してみたいという。「慶應義塾のキャンパス間ネットワークは非常に充実しており、複数の拠点にまたがったVLANも構築できるようになっています。ただ、主要キャンパス以外にも大小さまざまな拠点があり、小さな拠点の場合はその限りではありません。そんな拠点の無線環境も管理下に置くことを考えると、クラウドWi-Fiという選択肢もありうる」と今後について大塚氏に語っていただいた。