日産自動車

グローバル標準からの脱却で選択肢を広げる
通常業務のみならず工場内でのIoT環境への拡張を実現

グローバル標準のネットワーク環境を整備してきた日産自動車株式会社では、グローバル本社建屋における無線エリアの拡張ともに、老朽化した既存のアクセスポイント(以下、AP)刷新を計画。新たな選択肢としての可能性を探るべく、Arubaの無線LANソリューションを導入。業務活用のみならず、社外から利用する際の安全なアクセス環境づくりや工場内での展開が期待されるIoT環境にも対応できる無線環境を整備。今では国内のみならずグローバルでの展開が進んでおり、無線LANにおける新たな選択肢の1つとして活用されている。

特定ベンダに依存せず、選択肢を持つことが必要だった

“人々の生活を豊かに”をビジョンに掲げ、革新的な自動車やサービスを生み出し続けている日産自動車株式会社。1933年の創業以来「人のこころまでも動かすクルマをつくりたい」という願いとともに自動車業界を強力にけん引し続けており、2016年にはグローバルで550万台を超える自動車を販売するなど、自動車市場での存在感をこれまで以上に高めている。現在は新たな中期経営計画をスタートさせており、2022年度には世界シェア8%にまで拡大させるべく事業展開を進めている。

そんな同社では、日本をはじめグローバル全体でネットワークを含めたワイヤレス環境が統一されており、長年運用してきた経緯がある。しかし、社内のインフラ整備やテクノロジー選定を担当するグローバルIT本部 ITアーキテクチャー&プロダクションサービス部 本部長 木附 敏氏は、以前から複数の選択肢を持つことが重要だと考えていたという。「これはワイヤレスに限らず、あらゆる環境で選択肢を持っておくことが戦略上必要だと考えていました。特定のベンダに依存している現状について、多少懸念を持っていたというのが正直なところだったのです」と当時を振り返る。

 そんなおり、2009年竣工したグローバル本社建屋の無線LAN環境に関して、利便性を向上させるべくアクセスポイント(以下、AP)の増強が検討されることになった。「竣工当初は多少コストの関係から無線のエリアを狭めており、一部は有線での運用も行っていました。しかし、利便性の面から無線エリアを拡張したいという要望を受けていたのです」と木附氏。設置しているAPが老朽化を迎えていたこともあり、選択肢を増やすための新たな環境整備にチャレンジしてみることに思い至ったという。

つなげることで新たなバリューを提供するArubaに期待

無線でつなぐことだけでなく、つなげることで新たなバリューを提供してくれるところにArubaの良さがある。

新たな環境を整備する要件として挙げたのは、当時の最新規格に対応していること、そしてゲストアカウントを発行する際に、セルフサービスでワークフローが動く仕組みが実装できることだった。「以前は社員がゲストのためのアカウントを申請すると、総務部が受付し、アカウント発行が手作業で行われていました。管理工数がかかるため、すべてのゲストにアカウントを発行できる拠点が限定されていた。多くの従業員が活用できるよう、ゲストアカウントの申請から発行まで、自分たちで行えるような仕組みを整備したかった」と語るのは、同本部 中野 雄資氏だ。

 また以前の環境では、電波干渉などの課題に対応するべく、導入前に綿密な電波調査を行ったうえで、設計・導入するという状況が続いていた。「導入するまでのリードタイムが少しでも短縮できるものが必要でした。また、APを管理するコントローラが拠点ごとに必要だったため、コスト的にも高額なるばかりか、分散管理を強いられることも。複数の拠点を束ねて集中管理できる環境が必要だと考えたのです」と木附氏。
 
 そこで目を付けたのがArubaの無線LANソリューションだった。Arubaであれば、AP設置後に電波環境を最適な形に自動調整する機能を持っており、設置までのリードタイム短縮に貢献するだけでなく、冗長化を含めた複数のコントローラを束ねることで集中管理できる環境が整備できると考えたという。実は、今回の検討以前からArubaについては興味を示していたと木附氏。「無線をつなげること、そのものがバリューではなく、つなげることで新たなバリューを提供してくれる会社というところに期待を持っていたのです」。そこで、まずはグローバルIT本部にて数十台規模を導入したうえでテスト稼働させ、実際の使い勝手を検証することに。「テスト段階で十分に機能や性能を評価し、Arubaであれば我々が求める条件に適した無線環境として活用できると判断できました」と木附氏。
 
 ただし、これまではルノー・日産アライアンスとして決められたグローバル標準にて環境が構築されており、その環境に風穴を開けるのはとても難しい部分もあったという。「それでも、新しいテクノロジーにぜひ挑戦してみたいとグローバルに対して宣言したうえで、第一歩を踏み出すことにしたのです」と木附氏。結果として、グローバル本社に展開していた無線LAN環境を刷新するプロジェクトが動き出し、新たな選択肢としてArubaの無線LANソリューションが選択されることになった。

オフィスや工場におけるIoTなど様々なインフラへ展開

Nissan

実際の展開については、2014年にグローバル本部にてテスト導入を実施したうえで、2015年からグローバル本社含め、日産自動車九州、八景島にあるカスタマーサービスセンター、相模原部品センター、座間事業所などに導入が拡大している。2016年までに国内では1000台近い規模のAPが既存環境と置き換わっており、加えて2017年度には、3000台を超す規模が導入されている既設APのおよそ3分の2がArubaに置き換わった。また、2018年度には1200台を超える規模が稼働しているテクニカルセンターでのAP刷新が計画されている。なお、海外については、グローバル本社導入後に、ルノーのIS部門が管理するフランスのオフィスに数百台規模のAruba APが導入されているという。

 基本的にオフィスや工場で利用するAPはすべてAP-205に統一されており、無線コントローラは大規模拠点にそれぞれ設置、将来的には複数の無線コントローラを束ねて一元管理できる環境をデータセンターに構築する計画だ。また現場の状況を可視化するためにAirWaveが、テスト的に導入された無線環境におけるアクセス制御にClearPassが導入されており、ClearPassについては今後セキュリティチームと相談しながら認証基盤としての範囲を拡大させていく予定だ。
 
 SSIDは、業務で利用する社内用をはじめ、ゲスト用や工場でのIoT用、そして “WIMO(ワイモ)”と呼ばれているグループ向けのサービス用それぞれに用意されている。WIMOはルノーの社員が日本への出張時に、自身のスマートデバイスから無線LANを経由してインターネット接続を可能にするサービスだ。「ClearPassを使えば、Active Directoryにて認証がとれたIDがどんなOSでアクセスしてきたのかを識別し制御できるため、スマートデバイスOSのみインターネット接続を許可するといった運用が可能です。この制御はClearPassがあってこそ」と中野氏。
 
 また、同社と提携している企業に役員が異動する際には、日産の環境を社外からでも安全に利用できるよう、RAP(Remote Access Point)と呼ばれるAP-205Hを異動先に設置するという。「アクセス制御はClearPassでしっかり行うことが可能です。我々が提供する標準PCとAP-205Hを組み合わせて活用すれば、たとえ社外からでも日産の環境に安全にアクセスできるようになっています」と木附氏。
 
 現在はオフィス全域に無線エリアが広がっており、一部有線ネットワークと併用しながら様々な業務に活用している状況だ。ただし、全面的にすべてのアプリケーションが利用できる前提でサービス提供は行っていないという。「Skypeなども無線を経由して行っているケースは増えていますが、無線の帯域が十分でない拠点も残っています。その拠点を考慮して、現状はまだ有線での使用を推奨しています」と木附氏。無線環境で利用できることを推奨するのであれば、グローバルでネットワークでのQoSを設定することが必要になる。グローバルでQoSポリシーをしっかり定めたうえで、ルノーのメンバーも踏まえて検討を進めているところだという。
 
 また、これまで無線環境が導入されていなかった工場にも新たにAPが設置されており、メッシュ構成で工場内の広いエリアをカバーしている状況だ。「今後増えてくるセンサーなどのIoT環境や有線インターフェースのない機器などに対応できるよう、広い範囲で無線環境を整備しています。現状は横浜工場が中心ですが、他の工場にも広げてきたい」と中野氏。
 
 なお、Aruba Beaconを利用して、従業員の動線把握や設置された機械の位置検知など各種データを取得し、ラインの最適な配置といった用途に活用できるかどうかのトライアルも行われている。他にも、モバイルアプリが容易に作成できるプラットフォーム「Meridian」を使って、位置情報を活用したアプリケーションを作成するなど、新たな価値を生み出す仕組みづくりにもチャレンジする予定だ。
 
 無線環境の刷新によって集中管理が可能になっただけでなく、セルフサービスでゲストアカウントの発行から接続までが可能になるなど、運用面でのメリットを実感していると木附氏は評価する。「導入前には想定していなかったWIMOのようなサービスも、わずか1カ月程度のリードタイムで実装できました、RAPについても要望があってからわずか1カ月程度で環境が整備できたほど。急な案件であっても、過剰なコストを掛けずに用意できるのはArubaの大きな魅力の1つ」と木附氏。ゲストアカウントについては、今はすべてのお客様にゲストWi-Fiが利用できる環境を整備することができているという。「無線のカバレッジが広がり、ユーザーの満足度は間違いなく上がっているはず」と木附氏は力説する。

 ハードウェア的な部分については、導入後にトラブルもなく、不具合はほぼ発生していない状況が続いている。「古い規格しか対応していない無線IP電話との接続がうまくいかない事象が発生したときには、下位互換性を持たせるようファームウェアをバージョンアップしてくれたこともあります。ゲストWi-Fiのログイン画面の修正など、いろいろ考慮して対応いただいており、とても感謝しています」と中野氏は評価する。

 またログの解析もしやすく、以前に比べて状況把握が容易になったと評価する。「WIMOサービスを導入した当初は、何人使ってどれくらい接続に失敗しているのか、Clarity機能などを利用して毎日レポートをメールにて通知するような運用も実施していました」と中野氏。実は、日々の運用管理はインテグレーターなどに委託しており、以前の環境では情報入手に数週間かかることも。「今では欲しい情報がすぐ自分たちで入手できるようになりました。ただし、実際にトラブルが起きていないので、それほど解析する機会がないのが実態です」と木附氏は語る。

ClearPassの用途拡大やAruba Beaconでの位置情報活用に期待

 今後については、現在グローバルIT本部にテスト的に導入した無線環境の制御にのみ使っているClearPassをさらに活用範囲を広げていきたい考えだ。ただし、現状の認証サーバをClearPassに置き換える際には、アライアンス先のセキュリティ環境などサードパーティとの連携がどこまで円滑にできるのか、十分検討する必要があるという。「様々な形で連携していかないと自動管理は難しい。新たなチャレンジとして、どこまで使えるのかトライしていきたい」と中野氏は語る。

 また、位置情報を取得するためのAruba BeaconやMeridianの可能性についても言及する。「今いる位置情報から最も近い空き会議室が簡単に予約できるといった仕組みだけでなく、Aruba Beaconの位置情報をうまく使うことで、ワイヤレステクノロジーによる新たなバリュークリエーションにつなげていきたい。実際に取り組んでいる活用事例も含めて、様々な情報提供に期待しています」と木附氏に語っていただいた。