プライベート5Gとは
プライベート5Gを利用すると、企業はモバイルネットワーク用の最新の3GPP規格に基づいた専用のセルラーリソースを展開できます。プライベート5GはWi-Fiを補完するもので、広いエリアを対象に専用リソースを用いて企業の管理下でカスタマイズされたエクスペリエンスを提供することで、予測可能なモビリティや、遅延の影響を受けやすいアプリケーションをサポートします。
プライベート5Gの説明
プライベート5Gの「プライベート」とは、特定の企業のニーズを満たすために、企業の管理下でプライベートリソースへの専用アクセスを備えた3GPPベースのセルラーネットワークを展開することを表しています。プライベート5Gでは通常、CBRS向けに定められたものと同様の条件で、プライベート用途に使用できる共有スペクトラムを利用します。
プライベートLTEとは
プライベートLTEを利用すると、企業はLTE/4Gの3GPP規格に基づいて、プライベートリソースへの専用アクセスを備えたセルラーネットワークを展開できます。プライベート5Gは、プライベートLTEよりも遅延が少なく高速なさらに進化したセルラーテクノロジーです。
5Gとプライベート5Gの違い
パブリック5Gは、モバイルネットワーク事業者が加入者に提供する共有リソースであり、プライベート5Gは、企業の管理下のプライベートリソースへの専用アクセスを提供するものです。
プライベート5Gの仕組み
プライベート5Gは、次の3つの主要なコンポーネントで構成されており、オンプレミス、クラウド (as a serviceでの提供)、またはハイブリッドモデルで管理できます。
- 5Gモバイルコア
プライベート5Gネットワークの管理レイヤーで、既存のWi-Fiネットワークを管理するものと同じツールを通じて企業に公開されます。 - 無線アクセスネットワーク (RAN)
ローカル無線ネットワークで、通常は企業用途として明確に定められた共有スペクトラムを利用します。 - 5Gクライアントデバイス
物理または仮想SIM認証情報を含むネットワークのモバイルエンドポイント。
プライベート5Gコアは、パブリック/プライベートクラウドまたはオンプレミス環境に展開できます。
プライベート5Gに存在するモデル
次のような複数のモデルが存在します。
- 企業所有のプライベート5G: 企業がすべての設備を所有して管理し、企業のプライベート用途として明確に定められた共有スペクトラムを利用します。
- 5G as a service: サービスプロバイダーまたはシステムインテグレーターがネットワークを展開し、企業に代わって管理を行います。
- 中立ホスト: 上記の展開モデルのいずれかで、プライベートネットワークがパブリックセルラーネットワークからの加入者のインバウンドローミングを引き受け、セルラーカバレッジのローカルギャップを解消します。
プライベート5GとプライベートLTEの比較
5GとLTEはどちらも3GPPのセルラー規格です。LTEは、4Gとも呼ばれ、5Gの1つ前の世代にあたります。そのため、5Gでは、エンタープライズネットワーキングの要件に対処するための、設計および性能上の強化が図られています。5Gでは、スペクトラム効率を向上させる次の3つの基本的なテクノロジーに基づいてこれを実現しています。
- 柔軟なコアネットワークアーキテクチャー
- 5G無線
- モバイルエッジコンピューティング: リソースをコアから、データが使用および生成される場所の近くに移動
プライベート5Gの市場規模
IDCによると、プライベート5Gの市場は、2026年までに16億ドルに達すると見込まれています (IDC、「2022~26年の世界のプライベートLTE/5Gワイヤレスインフラストラクチャに関する予測」、文書番号US48891622、2022年3月)。
プライベート5Gの主なユースケース
プライベートセルラー (LTEおよび5G) は新たな市場で、これまでのところ、エネルギー、鉱業、製造業、交通運輸、物流、行政、公共施設での投資が大半を占めています。プライベートセルラーネットワークが既存のWi-Fiネットワークと密接に統合されるようになれば、さらに広範な市場での機会が広がります。これには、カバレッジエリアの拡大、内部トラフィックとゲストの分離、高速IoTクライアントでの予測可能性の高いモビリティの実現、またはパブリックネットワークカバレッジでのギャップの解消などが含まれます。その主なユースケースは次のとおりです。
- 小売事業者は、モバイルPOS端末やインベントリスキャナーの運用、ビルディングIoTシステムの接続、フォークリフトへの高耐久タブレットの装着を行い、倉庫のロボティックシステムを動かすことができます。
- 製造業では、無線対応の動力工具を使用して製品の製造工程をさまざまな側面から記録し、マシンビジョンシステムを利用して品質検査を自動化することができます。
- 公共施設では、チケットスキャンを行い、スタッフ間でプッシュツートーク (PTT) による音声交信を使用できます。また、スポーツチームはセキュアなサイドラインデータ端末を利用してリアルタイムで意思決定を行うことができます。
- 病院では、遅延の影響を受けやすい医療テレメトリをナースステーションや電子カルテ (EMR) サーバーに提供し、医療スタッフ向けにPTT音声通信を提供し、患者、家族、スタッフ向けに屋内セルラーサービスを強化することができます。
- 鉱業や重工業では、ケーブルを敷設することなく、プライベート5Gを利用してカバレッジエリアを拡大できます。
プライベート5GおよびWi-Fiに対するHPE Aruba Networkingのアプローチ
HPE Aruba Networkingでは、企業は自社の無線ニーズに対応するため、将来的にプライベートセルラーとWi-Fiの両方を使用するようになると考えています。企業からは、プライベートセルラーやWi-Fiをサイロ化して展開するのではなく、既存のツールを使って管理できる馴染みのある統合ソリューションを利用したいという声が寄せられています。
IDCによると、HPEはプライベート5GのリーディングカンパニーであるAthonet社を買収することで、クラウドネイティブな5Gコアソフトウェアを強化し、Athonet社の一連の製品をオンプレミス、完全なクラウド、またはハイブリッド形式で提供できるようにしています。Athonet社は、ホスティングサービスとして、またはチャネルとしてモバイル事業者を通して企業に直接販売できます。
5GおよびWi-Fiネットワーク間でのクライアントデバイスの移動方法
Aruba Air Passにより、SIM認証情報を持つWi-Fi対応デバイスは自動的にローカルWi-Fiネットワークに接続できます。Aruba Air Passサービス、パスポイント認証、およびWi-Fi Calling (WFC) を組み合わせることで、SIMベースのIDと企業の認証情報を連携させながら、建物内やキャンパス内でWi-Fiによるセルラーカバレッジを確保できます。
プライベート5GとWi-Fiのメリットの比較
プライベート5GとWi-Fiは、二者択一で語られることが少なくありませんが、これらは極めて相互補完的な関係にあるため、企業はプライベート5GとWi-Fi 6/Wi-Fi 6Eを併用する新たな方法を模索しています。
プライベート5GとWi-Fiには、次のような相互補完的な特徴があります。
- プライベート5Gは、エリアカバレッジの拡大、高速モビリティ、予測可能なネットワークアクセスを提供します。
- Wi-Fi 6およびWi-Fi 6E (802.11ax) は、高密度展開 (特に屋内) でネットワークキャパシティを提供します。
業界での事例は以下のとおりです。
- 大規模な公共施設では、セキュアなバックエンドのアプリケーション用に専用のプライベート5Gを使用し、ファンの活動用にキャパシティの大きなWi-Fiを用意しています。
- 倉庫では、動きの速いロボット/自律型車両に対する広いエリアでのシームレスなローミング用にプライベート5Gを使用し、オフィス用途や、非接触施錠などのIoTアプリケーション用にWi-Fi 6/6Eを使用しています。
- 高等教育機関では、キャンパスの防犯カメラ用にプライベート5Gを使用し、高密度な講堂や学生寮向けにWi-Fiを使用しています。
- 行政機関では、機密レベルの高いアプリケーション用にプライベート5Gを使用し、屋内でのモビリティやゲストアクセス用にWi-Fiを使用しています。